経理マンの起業体験記No.2・・Webサービス

はじめに

カメラ輸出がうまくいかなくなった時、カメラ輸出を引き続きやるべきか、他の事業を始めるべきか、またはサラリーマンに戻るべきか、いろいろ考えました。

考えてみると、カメラ輸出はお金儲けのために始めた商売で、別に自分が得意としていることでもなければ、過去自分が従事してきた経理の仕事とも全く関係がありません。
自分の生活に必要なお金が稼げなくなった時、この商売を何とかして立て直すといった気持ちが全く湧いてきませんでした。

サラリーマンに戻ることも考え、人材紹介会社に登録して自分を雇ってくれる会社を探そうとしたのですが、40歳をゆうに超えた脱サラした人間をなかなか雇ってくれるところはありませんでした。

そこで、今度は自分が得意としていることで新たな事業を始めようと考えた訳です。

会計システムを作ってWebサービスで提供しようと決めました

自分の得意分野を考えた時、私がサラリーマン時代にやってきたことは経理だったので、まずこの経験を使わない選択肢はないと思いました。

また、転売をやっていた時に分かったことなのですが、帳簿をエクセルで作るのは、20年くらい経理経験がある私でも結構手間がかかるものでした。
会計システムがいろいろ出回っていることから分かると思いますが、お小遣い帳レベルではまだしも、複式簿記できちんとした決算書をエクセルで作るとなると難しいものがあります。

また、転売は回転の良い商品だけ選んで仕入れるので、取引件数がものすごい数になります。
この取引全てをエクセルでポチポチ入力していくのは、なかなか時間のかかるものです。

Amazonや楽天などでは、取引履歴をCSV形式でダウンロードできます。
そこで、そのダウンロードしたデータを使って、決算書まで作ってしまえるようなシステムをWebサービスで提供すればいい商売になるのではないかと思ったのです。

起業塾に参加しました

しかし、思い付きで商売を始めるのはリスクが高いと思った私は、どこかでこの商売について相談できるところは無いかと思って探したところ、「オーダーメイド起業プログラム」という起業塾があることを知り、この起業塾に参加しました。

この起業塾に参加した理由は、ゼロベースからどのように起業していくのかといった起業塾だったことと、この起業塾の主催者である五丈さんという方と、自分が始めようとしている事業についてマンツーマンで相談できるといった特典があったということです。

本当は「ゼロからWebサービスを作って起業しよう」みたいな起業塾があればよかったのですが、探してみても当然のごとく見つかりません。

実際にマンツーマンで相談にのってもらった時も、自分のやってきたことなどを話して「こんな商売を考えているんです。」など話しても、「なんだかピンとこないなあ・・・」といった顔でしばらく悩んだ後、私に合うような適当な商売ネタが見つからなかったのか「これでいいと思いますよ」といった気の無い返答があったきりでした。

私としては、Webサービスを作って商売をしている方の経験談を知っているのならば聞きたいとか思っていました。
しかし、五丈さんはバリバリの営業マンが起業コンサルをやっている感じであり、システム関連事業のコンサルをやったことがないとのことであまり参考になる話は聞けませんでした。

とりあえずシステムの作成にかかることにしました

何を商売にするかでいくら悩んでいても、先に進むことはできないと思い、システムの作成にかかることにしました。

この段階で悩んだことは、システムを自分で作るか、それとも外注するかでした。
自分でシステムを作れば、サービスを開始した後の保守や運用なども自分でできるので、将来の費用が少なくなると思いました。
一方で、システムを自分で作ることなどできるのかといった不安も、当然のごとくありました。

システムの作成を外注してしまえば、費用は掛かりますが、サービス提供までの時間は短縮できるし、プロの人が作るので素人がゼロから作るより、きちんとしたものができそうです。

しかし、プログラムの内容も全く分からない状態になるため、サービスをリリースした後も保守や運用のために人を雇う必要がありそうです。

また、システムの作成を外注しても、その外注先がシステムを完成できずに匙を投げるといった事態になったことを聞いたこともあり、システムの外注をしたこともないのに「はい、任せました」の一言で全てうまくいくのかといった心配もありました。

システムを自分で作ることにしました

あまり費用をかけたくなかったのと、売れるのかどうかも分からない段階で人を雇い続けることができるかと悩んだ結果、とりあえず自分でシステムを作ることができるのか聞いてみることにしました。

調べた結果、TechAcademyという会社がやっている「Webアプリケーションコース」というカリキュラムを受講すると、Webサービスの完成まで面倒を見てくれるということが分かりました。

無料の説明会があったので、渋谷まで出かけて行って、本当に「Webサービスの完成まで面倒を見てくれるのか」「完成までどのくらい時間がかかるものなのか」など聞いてみると、エンジニアさんに見積もりを依頼してくれることを約束してくれました。

送られてきたエンジニアさんからの見積もりを見ると「頑張れば一か月、普通で二か月くらい」で私の考えているようなWebサービスを完成できるといった回答がきました。

予想よりも短かったので「本当にこんな時間で完成まで持っていけるのか」と思いましたが、これだったら最悪でも三か月あれば完成できるだろうと思い、三か月間このプログラミングスクールで勉強しながら自分で作ることにしました。

プログラミングスクールに参加しました

私は文系で、理系とは程遠い人間なのですが、TechAcademyの講座は途中難しいところもありましたが、ある程度順調に進められたと思います。

カリキュラムは講座を受講するのに必要な設定から始まり、HTML/CSSやBootstrapなど基礎を学び、3つの課題をクリアした後、オリジナルのWebサービスの作成に入るといった内容でした。

しかし、事前にいただいたエンジニアさんの見積もりにもかかわらず、一か月たっても3つの課題をクリアするところまでやっと終わったといった感じでした。

TechAcademyの講座には、一週間に二回、メンタリングといって担当の講師の方と「Slack」というサービスを使って、画面共有しながら質問や相談ができる機会があります。
一か月くらいたった時のメンタリングで「頑張れば一か月、普通で二か月くらいと見積もりをいただいたんだけど・・」といった話をしたところ、一か月で終了できるのは前に同じ講座を受講した生徒くらいなんだそうです。

同じ講座を受ける人などいるのかと思いましたが、Rubyなど新しい言語は、バージョンアップが定期的に行われており、バージョンアップの内容を知るために同じ講座を受講する生徒がいるらしいです。

オリジナルサービスを作る段階になりましたが・・・

3つの課題をクリアすることができたので、メンタリングで私がどんなシステムを作りたいかをPowerpointを作って説明したのですが、担当の講師の方の表情が私の説明を聞けば聞くほど険しくなっていくのです。

担当の講師の方の話によると、大抵の生徒さんは「Twitterクローン」という3つの課題の一つを適当にまねたシステムをちゃちゃっと作ってプログラミングスクールを終了させてしまうようです。
そのため、私のようにガチでシステムを組んで、お金を稼ぐことまで考えている人間がいるのにまず驚いたようです。

しかし、私を担当してくださった講師の方はいい方で、本当は一回30分のメンタリングを、時間がある時はニ時間くらいやってくれるなど、できるだけ私のシステムが完成できるように協力してくださいました。

それでも「最悪でも三か月あれば完成できる」と思っていた三か月間のスクール期間では、これだけ作れれば、あとは完成に向かうのでは・・といった程度しかシステムは完成しませんでした。

もうはまだなり、まだはやっぱりまだなり

株式投資の格言に「もうはまだなり、まだはもうなり」というものがあります。
しかし、システム開発については、いつまでたっても「まだ」の状態が永遠に終わらないように感じました。

TechAcademyを9月に始めて、12月の終わり頃になると「そろそろ完成かな」と思えるレベルまで来ました。
そのため翌年の確定申告時期には間に合うかなど気楽に考えていました。

結果を最初に言ってしまうと、翌年の12月になっても終わりませんでした。
その翌年の12月になってやっと終わりました。
つまり完成まで2年もかかってしまいました。

エラーが出なくなれば、もう完成は近いと思っていました

まず最初に感じる勘違いがこれなのですが、システムを作り始めた当初は、エラーが出ることが当たり前で、このエラーを処理してシステムがきちんと動かすことが第一のハードルになります。

しかし、エラー無くシステムが動くということは、単にプログラミングしたコードをコンピュータがきちんと読むことができているというだけで、作り手が考えたような結果をコンピュータが出してくれるかどうかはまた別問題なのです。

4ヶ月間、毎日のように朝から晩までコンピュータと格闘してできたシステムがこのレベルだったわけですが、事前にEXCELで計算していた想定値と、システムから出てきたデータが違うのです。

単純なエラーであれば、プログラムを動かした後に「この部分のプログラムは訳分かりません」といったメッセージがコンピュータから出力されるため、そこを直すだけでいいのです。
しかし、エラーが出ないけど、出てくるデータが違うということは、コンピュータに与えている命令が作り手の意図と違っているということなので、一からプログラムが正しく構成されているか考える必要があるのです。

ここで人間相手だったら「お前どうしてこんな答えを出してくるんだ?」といった感じで質問ができるのですが、コンピュータ相手だとこんなことを聞いたら「お前がそう命令したからだ」といった答えしか出ない訳です。
そこで、ただひたすら正しくプログラムを組んでいるのか、プログラムを確認する作業が永遠に続くのです。

考えてみると、このデータチェックに一番時間がかかったように思えます。
感覚値で言うと、2年の内の1/4はこのデータチェックに使った気がします。

マニュアルを書いていると使ってもらえるとは思えなくなりました

苦労してある程度きちんとした結果がでるシステムを作った頃、「だけどマニュアルがないと何も知らない人がこのシステムを使うことはできないな」と思ってしまいました。

触っていれば何となく操作方法が分かってしまうシステムはあることはあると思いますが、大抵のWebサイトはヘルプ画面やチュートリアルなど何らかのマニュアルがあると思います。

私の作ったシステムは結構な規模になってしまったため、マニュアルを用意しないと見ず知らずの人では見た瞬間に触ってくれないかも、と思ってしまいました。

そこで、マニュアルを作成し始めた訳ですが、マニュアルを作成していくと「この画面の使い方をどう説明すればいいのやら・・」と考えてしまう画面も見つかります。
自分で作った画面なので自分では使い方が分かるのですが、他の人に言葉でもって説明できないような画面では、使ってくれる人もまずいないなと思いました。
そういったところは、画面の構成やら操作方法を変えるなど、最初からやり直す必要がありました。

最初から外注に出せばよかったのか・・悩みました

散々苦労してシステム完成まで2年かかってしまったお話をしてきたのですが、ここで私が「最初から外注に出せばよかったのか・・」と思っているかと言うとそうでもないのです。

まず、よその人や会社に私が作ってほしいシステムの作成を依頼した場合、どのようなシステムを作ってほしいか説明しなければなりません。
私の場合、システムが想定外に大きくなったのもありますが、担当の方に私のシステムを説明して分かってもらうだけでも一か月はかかるかなと思いました。
転売やら会計の知識がない方達に、私がどのようなシステムを作ろうとしているのか知ってもらうのだけでも相当時間がかかることが予想されます。

次に、私が作ってほしいシステムの内容を分かってくれて、システムの作成にかかってくれたと仮定した場合でも、おそらくなんですが「こりゃなんじゃ」というような代物ができることも多いと思います。
作ってくれた方が考えているシステムと、私が思い描いていたものが違うなどということは、普通にありそうです。

自分で作っていれば、気に入らなければその場で修正にかかればいいのですが、人に任せている場合にはそうとはいきません。
ただで直してくれればいいのですが「追加の費用を・・」みたいな話も出てくると思います。

最後に、これが一番重要なのですが、果たして私が思っているシステムを最後まで完成させてくれるのか、といったことを、システムが完成するまで心配し続ける必要があったと思います。

例えば、重い処理をする時に必要な「非同期処理」というものがあります。
普通のWebサイトやブログくらいではデータ処理がそれほど必要ないため「非同期処理」は必要ないと思いますが、私が作っていたものは会計システムであったため、どうしても必要であったのです。

そこで、TechAcademyの講師に「非同期処理」について聞いてみたのですが、何だか全員逃げ腰で、中には「サポートの対象外だ」と答える不届き者がいたりします。
全員講師は数年のエンジニア経験があるというTechAcademyのお触れ込みなのですが、数年の経験では「非同期処理」のシステムを作る経験をしたことが無い方が多そうです。

最初に「頑張れば一か月、普通で二か月くらい」と見積もりを出したTechAcademyのエンジニア同様、よく技術的なことも知らずに仕事を請け負ってしまう業者も多いのではと思います。

こうなってくると、システム作りとはプロに任せたから大丈夫などという世界ではなく、頼む側も真剣勝負でかからないと、お金は払ったがシステムが出来上がらないという事態もそれほど珍しくないのではと思ってしまうのです。

サービスをリリースする前にプロの方に見てもらいました

Webサービスをリリースする前に、MENTAというサイトでこの道10年というエンジニアの人に、私のシステムを見てもらいました。

システムを作り始めてから2年が経過していたので、ここで「これは全くダメですね」など言われようものならばどうしようといった所でしたが、結果はほぼほぼ出来上がっており、足りないところは運用でカバーすればといった話でした。

この方が、仮に私のシステムを作ってもらうとしても、大体6ヶ月はかかるといわれました。
TechAcademyの「頑張れば一か月、普通で二か月くらい」という見積もりはたぶん冗談だったのでしょう。

仮にこの方にシステムの作成を依頼した場合は、ざっくりと計算すると、
100万円×6ヶ月=600万円
くらいはかかるのではといった所だと思います。

実際にはTechAcademyの授業料が合計で32万円くらいだったので、節約したといえば節約したのですが、それだけ時間もかかっているので、どちらが良かったのか今でも分かりません。

自分のサービスの需要が思ったより少なくてびっくりしました

Webサービスをリリースするまでは、システムが完成すればあとは何とかなると思っていました。
何だか、何も考えずに人通りが全くないところでいきなりラーメン屋さんを始めてしまう人と同類だと思われるかもしれませんが、それよりはきちんと考えておりました。

よく「千三つ(せんみつ)」といって、1,000枚チラシを撒いても3件くらいしか反応が無いということはよく言われます。
興味があるかどころか、全く関係がない人達にも手当たり次第にチラシを撒くわけですから、反応がものすごく少ないのも無理はないところです。

しかし、私が見込み客だと思っていたAmazonや楽天で商売をしている方を探すのは、単にAmazonや楽天のホームページを見れば、住所と名前が書いてあるので難なくできます。
後は名簿を作ってDMを発送すれば、千三つよりもかなり高い確率で興味をもってもらえるのでは、と思っておりました。

しかし、ふたを開けてみると思ったよりも反応が少く、本当に千三つくらいの反応しかありませんでした。
なぜなんだろうと思い、反応を示してくれた方に話を聞いてみると、彼らは毎月2~3万円で税理士事務所に記帳をお願いしているようです。
そのため、お金の計算のためにやることといえば、段ボール箱に領収書や通帳などを入れて、税理士事務所に発送することくらいしかやっていないというのです。

この方達にとって、経理とは段ボール箱に領収書や通帳などを入れることであり、段ボール箱に書類を入れるスピードより速く経理ができないシステムなどは用がないようでした。

まとめ

システムの作成に2年もかけてしまいましたが、結局需要があまりないことがシステムを作ってしまった後に分かってしまったという、よくある結末になってしまいました。

昔「イノベーションハックセミナー」というタイトルのセミナーに参加したことがあります。
そのセミナーの講師の方は、最初は企画書だけを持ってお客さんの所に行って、興味を持ってもらったらメールや最小限のツールだけ使って仕事を受けて、プログラムを書いてもらうのはお客さんが増えてきてからだといったようなことをおっしゃっていました。
これも一つの正解ではあると思うのですが、私には企画書以外何も準備ができていない状態で、見込み客のところに行く度胸は残念ながらありませんでした。

ちょっと前にイケハヤさんという方がしゃべっているYouTubeを見たことがあります。
タイトルが起業なんて失敗するに決まってるだろアホ。というものでした。
タイトルがちょっときつい表現になっているのですが、要は起業のほとんどが失敗するもんだといったことをおっしゃっていました。

結構なんで失敗したんだろうと悩んだ時期もありましたが、このYouTube動画を聞いてちょっと腑に落ちたものがありました。
今回の失敗の原因は、起業とは失敗するのを前提として始めなければならないところを、成功するのを前提で頑張ってしまったことだと思います。
まあ、ここまでストイックに考えなくても、最低でも、私の作ったシステムを試しに使って意見を言ってくれるような人を三人くらいは確保する周到さは必要だったかもと反省しています。

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