経理マンがベンチャー企業に転職しました・・・意味不明にブラックな環境にどうしようかと思いました

はじめに

大手会計事務所で暇な日々を過ごしていましたが、ある日の日経新聞を見ると企業買収を行っている会社の求人広告が目に入り、応募要件に米国公認会計士試験の合格が記載されていたので応募してみることにしました。

面接を受けてみて何も気にならなかった訳ではありません。
後に直属の上司となる役員の方と面接をしたのですが、面接の最中に携帯をチラチラ見て、ちょっとすみませんと席を立ったりするわけです。
結局、面接はこの一回で終わりで、社長とお会いすることも無く内定が出ていました。

私は何度か転職を経験しているのですが、人を採用するのに、これ程適当な会社はありませんでした。
面接が適当な理由はすぐに分かることになるのですが・・・。

いきなり自費でノートパソコンを購入させられました

入社初日に、二日後にアメリカへの出張を命じられました。

仕事で海外に行くことは、当時は自分が望んでいたことなので不満がある訳ではないのですが、上司より「別に必ず必要という訳ではないけれど・・・海外で仕事をする時必要になるんだよね・・・だからノートパソコンを用意してくれますか。無理にとは言わないけれど・・・」みたいな感じで、自費でノートパソコンを買わされました。

パソコンなど会社が用意するものだとばかり思っていたのですが、いきなり仕事に必要な備品、それもちょっと高額なものを自費で負担しろと言われ、これは何だと思いました。

ちょうど私が入社した同じ日に、証券会社から移ってきた方がいました。
その方とビックカメラに行く途中で「納得はいかないけれど、入社したばっかりの人間がノートパソコンを買わずにアメリカ行ったら何言われるか・・・」と話ながら、ノートパソコンを買ってきたのを覚えています。

アメリカではこんな仕事をしました

入社した二日後に、私は同じ日に入社した方とNewYorkに行きました。

NewYorkに行くと、COOと言う役職の私の上司と、CFOと言う役職の人間の元で働くことになりました。
今まで役員と言った方達と働くことなどなかったので、100名ちょっとの会社でしたが、一応JASDAQに上場している会社の役員と働くのは緊張しました。

私は買収した会社の無形固定資産の評価という仕事をすることになりました。
これはどんな仕事かと言うと、特に成長途中の会社を買収する時は、会社の純資産額よりも高い値段を払って会社を買う場合が多いのですが、会計では、何故買収する会社の純資産額よりもお金を多く払ったのか説明しなければならない訳です。

本当のところは、買収する会社の株主が高い値段ではないと会社を売ってくれないからといった理由になります。
しかし、こんなことを監査法人にいうことはできないので、監査法人とは別の会計事務所に頼んで、高く買った理由を評価してもらう訳です。
例えば、買収した会社が持っている顧客リスト、受注残やソフトウェアなどが、それぞれいくらくらいの価値があるかを、いろいろ理屈をつけて具体的な金額を付けてもらう訳です。
そして、どうしても理屈では説明できなかった差額については「のれん」ということになります。

この「のれん」は、米基準や国際会計基準では買収した会社の業績が、想定通りに推移している間は償却する必要がありません。つまり、余計な費用を計上する必要が無いため、その分利益が多くなるわけです。
このため、買収を繰り返している日本の企業では、日本以外で資金を調達する予定もないのに国際会計基準を採用しているところも少なくありません。

一緒に入社した方が3日でいなくなりました

ところで、私と一緒にアメリカに来た方ですが、アメリカに来て3日後に日本に帰ってしまいました。
日本に帰る前にちょっと話したのですが、役員と一緒に証券会社をまわっていた時、気分が悪くなり道端で吐いてしまったそうです。
その時、普通ならば「大丈夫か」みたいな反応を示すのが普通だと思うのですが、役員たちが言ったのは「体調くらい何とかしろよ!」みたいな反応だったみたいです。

これを聞いて私は別に驚きませんでした。
なぜならば、私達二人はアメリカに来てから意味もなくいじめられていたからです。
普通の会社では、人を雇うのに採用広告をうったり、人材紹介会社に紹介手数料を支払っているので、採用した人がすぐに辞められては困るわけです。
しかし、この会社では「こんな仕打ちをしちゃうけど、あんた耐えられる?」と言わんばかりに初めからプレッシャーをかけてくるわけです。

私の場合は、他の人達がよく分からない会計分野の知識があったので、「こいついなくなると困るかな」という意識があったのか、それなりに生き残ることができました。
しかし、入って何日かで「こいつ別にいなくても困んないんじゃね」と思われてしまうと、いじめがあっという間にエスカレートして、一週間以内にその人を追い出しにかかるということが普通に行われていました。

こういったことをやる理由は、当初はよく分からなかったのですが、後で親しくなった同僚に理由を聞いてみると、体育会の発想で要は舐められないように初めの何日かでマウントをとってしまおうというつもりだったみたいです。
「子供じゃあるまいしバカじゃないの」とは思いますが、こんな変な会社も世の中には存在しました。

しかし、これが一か月たつと、上司からのこの無駄にいじめるといった行為が「何があったのか」と思うくらいなくなるのです。
「おそらく一か月いじめを耐えられたならばこいつ使えんじゃない」みたいな意識が働くのか働かないのか分かりませんが、いまさら優しくされても、もう既に頭の中では「いつ辞めるか」しか考えていないのです。

あまりにけちなので給料がきちんと振り込まれるか不安でした

今までの職場では当たり前のように支給されていた事務用品ですが、この会社では自腹で用意しなければなりませんでした。
パソコンも支給しない会社なので、当然といえば当然なのですが、当たり前のことが当たり前に受けられないということは、気持ちを必要以上に落ち込ませるものです。

事務用品を支給しないで従業員に自腹で用意される会社は、当時のベンチャー企業では結構あったようで、また聞きの情報ですが、ライブドアでもそうだったようです。

経費の申請も、稟議を通すのになぜか5人くらい回す必要があるのですが、稟議システムが最後の承認者で蹴られると最初の申請者まで戻ってしまうシステムであるため、蹴られると最初からやり直しになり精神的ダメージが大きい訳です。

最終承認者である役員が頭の悪い人間だった場合、よく分からない気分的なもので稟議を蹴るため、「稟議通すのもういいや」といった気分になってきます。
アメリカの子会社がお世話になっていた会計事務所への支払が、このような事情で滞ったため、この会計事務所の資金繰りが危なくなったといったうわさも聞きました。

経費精算など、とてもではないが期待できなかった状況をみて、最初のお給料がきちんと振り込まれるのかとても不安でした。
しかし、お給料が振り込まれていなければ、それを理由に会社をおさらばできるなと思っていたので、お給料が振り込まれているのを見た時は、安心したような残念なような不思議な気分でした。

一日中会議をやっていて仕事ができないのですが

私の上司は非常に会議が好きな人間でした。
毎日毎日部下を集めて、今何をやっているのか順番に聞いていきます。
だいたい会議を終えると3時間くらいたっています。
他の人が何をやっているのかなど聞いても、内容もよく分からないのでただひたすら我慢の時間です。

会議にこれだけの時間を使われると、仕事に使える時間が本当に短くなります。
翌日に進捗が遅いといわれて「それはあんたのせいだ」と思っても、とても口には出せません。

誰もが生産性が最悪だと思うのですが、私の上司はただただ自分の周りにみんなを集めて進捗を聞くのが何よりも好きでした。
会議は無駄と言う方はたまにいますが、そんなことはみんな分かっています。
会議が好きな役員から、会議を取り上げる手段がこの世に存在しないのが問題なのです。

B/Sを読めなくても会社を買うのに何の支障もありません

この会社の中にB/S(貸借対照表)を気にする人はいません。
損益計算書の売上高と経常利益しか気にする人はいないのです。

韓国籍なのになぜかカナダに家族を残してNewYorkに働きに来ている方がいました。
彼は確か証券会社の出身者だと思いますが、打ち合わせの中で、この会社が企業を買収する時の購入価額はどう考えても高すぎるといっていました。
私はそれを聞いて「それは、断れないくらいの札束で往復ビンタをかまして買ったからです」などと心の中で思っていました。

アメリカではこんな仕事をしましたのところで、「のれん」の評価に関わったということを書きました。
保守的な会社の場合、「のれん」の評価額をできるだけ小さくするため、顧客リストやブランドなどの無形固定資産を大きくし、毎期定額の償却費を計上しようとします。
なぜなら、「のれん」は毎期毀損していないかチェックし、毀損していると判断された場合、全額を損失計上する必要があるからです。

成長企業を買収する場合、会社の購入価額は高くなり、それに伴い「のれん」の金額はかなり大きくなります。
高い購入価額は高い成長率を反映するものですが、購入時に期待したように成長する企業などあまりなく、早いと2~3年で化けの皮が剥がれることになります。
こうなると「のれん」は毀損していると判断され、大きな「のれん」はそのまま大きな損失に変わるのです。

しかし、この会社は一円でも多く「のれん」の評価額を大きくしようとします。
将来の損失の恐れなど全く考えもしません。
そのため、IPOのための無形固定資産の評価などしたことがない会計事務所に評価を依頼し、無形固定資産の評価額を極端に低くしてもらい、監査法人にその評価書を出していました。
当然のように監査法人からその評価ではダメとの判定をもらってしまい、大手の監査法人に再度評価を依頼していました。

送別会を開いてもらったのに・・・

二回目にアメリカに行った時、この会社で働くのがつらくなり、日本に帰ったら会社を辞めると同僚達に宣言しました。
すると、その同僚達は送別会を開いてくれて、これで二度と会うことは無いと思って日本に帰りました。

日本に帰ってきて、今日会社を辞めることを上司に言おうと考えながら会社に到着すると、上司は海外に出張に行っていました。
なんか調子がくるってしまいましたが、ここでめげてはならぬと思い海外に電話をかけてみると、上司が電話に出ましたが、今会議中で話せないといった返事でした。
ここまで調子がくるうと、何だか辞める気が無くなってしまい、2か月後にまたアメリカへ出張を命じられた私は、アメリカで送別会を開いてもらった同僚達と再会してしまうのでした。

会社を辞めるのを言い出すのは、何度やっても慣れないものですが、こういうブラックな会社になると、更に言い出すのに心に力を使う必要が出てきます。
わざと辞めるのを言い出せない雰囲気を作っている訳ではないとは思いますが、何を言われるかと思うと気が引けるのです。

まとめ

結局この会社には8か月在籍しました。
転職する時の面接で、この会社の在籍期間が短いことをよく聞かれるのですが、この会社での8か月は他の会社での8年に相当する気分でした。
もちろんこの会社で働くことが充実していたなどということでは無く、いつも苦痛を受けながら働くため、楽しいことをやると時間は早く過ぎるが、嫌なことをやっていると時間が全然進まないといったところです。

しかし、この会社に入って日本人は本当に真面目だなと思うようになりました。
アメリカ人と結婚してこの会社で働いていた女性は、あまりのストレスにより精神科に入院したそうです。
私がよく話しをした仕事ができる男性は、胃潰瘍でERに運ばれたとのことです。

このような会社に勤めたことが無い人ならば、このような状態になる前に会社を辞めればいいのに、と単純に考えると思うのですが、真面目な人ほどこんな環境でも何とかしようと考えてしまうのです。
ブラック企業は従業員のそんなところを利用してくるので、ブラック企業で働いていることを自覚している方は、そういった会社は早々に辞めることを本当にお勧めします。

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